「頑張れ」を言う前に。やる気が育つ、褒め方・励まし方のヒント

「頑張れ」と言いたくなる気持ちの奥には、お子さんへの思いがあります。その思いがまっすぐ届くように、褒め方・励まし方のコツを、北海道美瑛のまなふく先生がやさしくお話しします。
①まなふく先生より
こんにちは、まなふく先生です。
前回は、ゲームやスマホのルールを親子でつくるお話をしました。今日は、お子さんへの「褒め方」と「励まし方」についてお話しします。
美瑛の丘では、朝晩の冷え込みが少しずつ深まってきました。もうすぐ初雪の便りが聞こえてくる頃です。季節が移るように、子どもの気持ちも、日によって、時期によって、ゆっくり揺れ動くものだと私は思っています。
そんな時期に保護者の方がかける一言は、思っている以上にお子さんの心に残ります。今日は、その一言を選ぶときのヒントをお届けします。
②「頑張れ」、つい言っていませんか?
テストの前、部活の大会前、宿題が進まない夜。お子さんの背中を押したくて、つい「頑張れ!」と声をかけたことはありませんか。
学び舎びえいに通う保護者の方からも、こんな声を聞きます。
「励ましたつもりが、子どもに黙り込まれてしまいました」
「褒めても『別に』と返されて、響いているのか分かりません」
「何と声をかければいいのか、分からなくなる時があります」
分かります。とてもよく分かります。
「頑張れ」は、保護者の方の応援の気持ちがそのまま詰まった、あたたかい言葉です。決して間違いではありません。ただ、言葉の選び方を少し変えるだけで、同じ気持ちがもっとやわらかく届くことがあります。
③なぜ「頑張れ」が重く響くことがあるのか
結論からお話しします。「頑張れ」は、すでに取り組んでいるお子さんには「今のままでは足りない」と聞こえてしまうことがあるからです。
子どもは、保護者の方が思っている以上に、自分なりに取り組んでいます。それなのに「頑張れ」と言われると、「ちゃんとやっているのに、まだ足りないのかな」と感じてしまうことがあります。
もう一つは、「何を」「どこまで」すればいいのかが伝わらないことです。「頑張れ」は気持ちを伝える言葉ですが、具体的な行動までは示していません。つまずいているときほど、お子さんは「どこから手をつけたらいいのか分からない」状態にいることが多いのです。
以前、ヒナを急かしてしまったお話をしました。あの後、私は「早く」をやめて、「羽、さっきより少し広がったね」と声をかけるようにしました。するとヒナは、少しほっとした顔で、また羽を動かし始めたのです。励ます言葉は、気持ちの強さよりも、「ちゃんと見ているよ」と伝わるかどうかが大切なのだと、そのとき気づきました。

教育心理学の分野では、結果そのものより、取り組み方に注目する声かけの方が、挑戦を続ける力につながりやすいという考え方があります。ただし、お子さんによって感じ方は違いますので、すべての子に当てはまるとは言い切れません(その点は要確認としてお伝えしますね)。
④褒め方・励まし方の工夫
ここからは、実際に使える声かけの例を、3つの場面に分けてお伝えします。
うまくいった時(褒める場面)
点数や順位だけでなく、そこに至るまでの過程に目を向けてみてください。
- 「毎日、漢字の練習を続けていたもんね」(結果の裏にある過程を見つける)
- 「字がていねいになったね。ノートが読みやすいよ」(「すごいね」に具体的な中身を添える)
- 「分からないところを、自分から質問できたね」(小さな変化をその場で言葉にする)
「すごいね」は気持ちの伝わるすてきな言葉です。そこに「何が良かったのか」を一言添えると、「ちゃんと見てくれている」という安心感にもなります。

つまずいている時(励ます場面)
「頑張れ」の代わりに、こんな言葉を試してみてください。
- 「ここまで続けてきたこと、ちゃんと知ってるよ」(これまでを認める)
- 「どこまで分かったかな?どこから分からなくなった?」(状況を言葉にする手伝いをする)
- 「何か手伝えることはある?」(寄り添う姿勢を伝える)
自分の状況を言葉にするだけで、気持ちが整理されることもあります。答えを急がず、少し待ってあげてください。

結果がなかなか出ない時(見守る場面)
- 「1か月前は難しそうだった問題が、解けるようになったね」(比べる相手は、少し前のその子自身)
- 「うまくいかない日があっても、続けていることが大切だと思うよ」(結果によらない安心感を伝える)
- 「応援してるよ」(気持ちはそのまま、重さだけ軽くして伝える)
きょうだいや友達との比較は、励ましのつもりでも「自分は認められていない」という気持ちを残しやすいものです。比べるなら、過去のその子自身にしましょう。
⑤つい「頑張れ」と言ってしまう日があってもいい
大事なことをひとつお伝えします。
「頑張れ」を、一度も言ってはいけないわけではありません。大きな勝負の日や、お子さん自身が「やってみたい」と思っているときの「頑張れ」は、心強い応援になります。
私がお伝えしたいのは、「なるべく使わないようにしてみませんか」ということです。「頑張れ」をなくすことが目的ではなく、他の言葉の引き出しを少しだけ増やしていただきたいのです。
つい言ってしまった日があっても、大丈夫です。後から「さっきは急に言ってごめんね。応援してるよ」と伝え直せば、それで十分です。子どもは、その伝え直しもちゃんと覚えています。
⑥今日、ひとつだけ試してみませんか
長くお話ししましたが、伝えたいことはシンプルです。
「頑張れ」と言いたくなったら、ひと呼吸おいて、「過程を見つける言葉」か「具体的な一言」か「問いかけ」に置き換えてみてください。
今日、すべてを変える必要はありません。ひとつだけ、いつもと違う言葉をかけてみてください。うまくいかなくても大丈夫です。また明日、試せばいいのです。
ここまで読んでくださったこと自体が、もう十分に向き合っている証拠です。忙しい毎日の中で、それでもお子さんのために声かけを振り返る時間をつくってくださっている。そのことを、まず私は労いたいと思います。
お子さんは、完璧な声かけよりも、「ちゃんと見ていてくれた」という積み重ねを、ずっと大きく受け取っています。
もし、お子さんへの接し方で悩んだときは、一人で抱え込まずに誰かに話してみるのも一つの方法です。学び舎びえいでも、そうしたご相談をいただくことがあります。
今日も一日、お疲れさまでした。丘の上から、いつでも応援しています。

まとめ

- 「頑張れ」は、すでに取り組んでいるお子さんには「今のままでは足りない」と聞こえることがあります。
- 褒めるときは、結果だけでなく「過程」と「具体的な中身」を一言添えます。
- 励ますときは、「頑張れ」の代わりに、「これまでを認める言葉」と「問いかけ」を使ってみます。
- 比べる相手は、他の子ではなく、少し前のその子自身です。
- つい言ってしまった日も、後から伝え直せば大丈夫です。
次にやってみること
今日、お子さんに「頑張れ」と言いたくなったら、「ここまで続けてきたこと、知ってるよ」か「何か手伝えることはある?」のどちらかに置き換えてみてください。うまくいかなくても、また明日試せば大丈夫です。

