「早くしなさい!」を言う前に。子どもが動きたくなる声かけのヒント

「早くしなさい!」を言う前にと伝える、時計を手にしたまなふく先生

「早くしなさい!」、今日も言ってしまった――そんな朝はありませんか。実はその言葉、子どもにはほとんど届いていないかもしれません。なぜ響かないのか、そして今日から使える言い換えのコツを、北海道美瑛のまなふく先生がやさしくお話しします。

①はじめまして、まなふく先生です

こんにちは。まなふく先生です。

北海道・美瑛(びえい)の丘の上で、のんびり暮らしているシロフクロウです。ちょっと年を取っていますが、まだまだ元気にしています。

私はこれまで、たくさんの子どもたちの「できた!」の瞬間を見てきました。ずっと苦手だった英語の長文が、初めてすらすら読めた子。定期テストで、今までで一番いい点数を取った子。部活と勉強の両立に悩んでいたけれど、自分なりのやり方を見つけた子。

どの子も、できるようになるまでの時間はバラバラでした。1か月でできる子もいれば、半年かかる子もいます。それでいいと私は思っています。

大切なのは、その子なりのペースで進むこと。そして、できたときに「よかったね」と一緒に喜んでくれる人がそばにいることです。

今日は、そんな私から、家庭での声かけについて少しお話ししたいと思います。

②「早くしなさい」、今日も言っていませんか?

朝、時計を見て「もう7時半!早くしなさい!」。宿題を見て「まだ終わってないの?早く終わらせなさい!」。夜、なかなか布団に入らない子どもに「いいから早く寝なさい!」。

こんな場面、心当たりはありませんか。

私のところに通う保護者の方からも、よくこんな声を聞きます。

「毎朝同じことを言っていて、自分がすごく疲れます」
「言うたびに、子どもの顔が曇るのが分かるんです」
「本当はもっと優しく言いたいのに、時間がないとつい強い言葉になってしまいます」

分かります。とてもよく分かります。

保護者の方は、決して意地悪で言っているわけではありません。むしろ、子どものことを思うからこそ、時間を守ってほしい、困らないでほしいと思って声をかけているのです。

それなのに、言えば言うほど子どもは動かない。むしろ黙り込んだり、反発したりする。そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。

③なぜ「早くしなさい」は響かないのか

結論からお話しします。「早くしなさい」が響きにくいのは、子どもと大人とで「時間の感じ方」が違うからです。

実は、私にも苦い思い出があります。ずいぶん昔になりますが、自分のヒナを育てていた時期がありました。狩りの練習が思うように進まないヒナに、「早く飛びなさい」「もたもたしない」と、何度も急かしていたのです。

私としては、寒くなる前に一人で狩りができるようにしてあげたい、それだけの気持ちでした。でも急かせば急かすほど、ヒナは木の枝から動かなくなっていきました。羽を広げようとせず、私の顔をじっと見て固まっているだけでした。

今振り返ると、私が伝えたかったのは「大丈夫、少しずつでいいよ」だったはずなのに、口から出ていたのは「早く」ばかりでした。子どもを思う気持ちと、実際にかけている言葉が、まったく別のものになってしまっていたのです。これは、フクロウも人も変わらないのだと思います。

時計を背景に、木の枝で動けずにいるヒナへ静かに寄り添うまなふく先生

では、なぜ「早く」は伝わりにくいのでしょうか。理由の一つは、時間の感じ方にあります。

大人は、7時半に家を出るとあと何分あるか、頭の中でだいたい計算できます。これは「見通しを立てる力」がある程度育っているからです(実行機能と呼ばれる、計画したり段取りを組んだりする脳の働きのことです)。この力は、思春期を過ぎても少しずつ育っていくと言われています(発達のスピードには個人差があるため、断定はできません)。小学校高学年や中学生では、頭では分かっていても、時間の感覚としてまだ体になじんでいないことが多いのです。

「早く」と言われても、子どもにとっては「何を」「どれくらい」急げばいいのか、実はよく分かっていません。ただ「怒られている」ということだけが伝わってしまうのです。

もう一つの理由は、「早くしなさい」が命令の形をしていることです。

心理学の世界には「心理的リアクタンス」という言葉があります(自分の自由を制限されると、逆に反発したくなる心の働きのことです)。人は誰でも、一方的に命令されると、たとえそれが正しいことでも、素直に従いたくなくなる性質を持っています。子どもも同じです。

つまり、「早くしなさい」が効かないのは、保護者の伝え方が下手だからではありません。子どもの育ちの特性と、人間の心の仕組みが関係しているのです。まずはそのことを知っておいていただけたらと思います。

④子どもが動きたくなる声かけの工夫

ここからは、実際に使える言い換えの例をお伝えします。3つの場面に分けてご紹介します。

朝の支度、宿題、寝る前の3つの場面を案内するまなふく先生

朝の支度の場面

「早くしなさい」の代わりに、こんな声かけはいかがでしょうか。

  • 「朝ごはんと身支度、どっちから先にする?」(選択肢を渡す)
  • 「7時50分には家を出たいから、あと15分だよ」(具体的な時間を伝える)
  • 「今日は昨日より5分早く準備できたね」(できたことに目を向ける)

命令ではなく、子ども自身が選んだり、見通しを持ったりできる言葉に変えることがポイントです。

宿題の場面

「早く宿題やりなさい」ではなく、こんな言い方を試してみてください。

  • 「宿題、何時からやる予定?」(本人に予定を決めてもらう)
  • 「まず1問だけ、一緒にやってみようか」(ハードルを下げる)
  • 「今日は数学と英語、どっちからやる?」(取りかかりやすい方から)

宿題が進まないとき、子どもは「面倒くさい」だけでなく「どこから手をつけていいか分からない」と感じていることもあります。

寝る前の場面

「早く寝なさい」の前に、こんな一言を挟んでみてください。

  • 「今日、一番楽しかったことは何だった?」(気持ちを落ち着かせる)
  • 「布団に入る時間まで、あと10分だよ」(見通しを伝える)
  • 「今日もよくがんばったね、おやすみ」(1日を肯定して終える)

寝る前は、子どもにとって1日の疲れが出やすい時間です。急かすより、安心できる言葉で締めくくる方が、結果的にスムーズに眠りにつくことが多いようです。

⑤うまくいかない日があってもいい

ここで、大事なことをひとつお伝えします。

毎回この通りにできなくても、まったく問題ありません。

保護者の方も人間です。仕事で疲れている日もあれば、時間に追われている日もあります。そんな日に、つい「早くしなさい!」と言ってしまうのは、当たり前のことです。

私がお伝えしたいのは、「完璧な声かけをしましょう」ということではありません。「こういう言い方もある」という引き出しを、少しだけ増やしていただきたいということです。

10回のうち1回でも、違う言葉をかけられたら、それで十分です。子どもは、その1回をちゃんと覚えています。

美瑛の夕暮れの丘で、読者へ優しく翼を差し出すまなふく先生

⑥今日、ひとつだけ試してみませんか

長くお話ししましたが、伝えたいことはシンプルです。

「早くしなさい」は、子どもに時間を伝えているようで、実は伝わっていないことが多い言葉です。代わりに、選択肢や見通し、そしてできたことへの一言を添えると、子どもは少しずつ自分から動きやすくなります。

今日、すべてを変える必要はありません。

朝でも、宿題でも、寝る前でも構いません。今日の場面で、ひとつだけ、違う言葉をかけてみてください。

うまくいかなくても大丈夫です。また明日、試せばいいのです。

ここまで読んでくださったこと自体が、もう十分にがんばっている証拠です。子育てのやり方を調べたり、自分の声かけを振り返ったりするのは、簡単なことではありません。忙しい毎日の中で、それでも子どものためにと時間を使ってくださっている。そのことを、まず私は労いたいと思います。

思うようにいかない日があっても、それは保護者の方が間違っているからではありません。子どもも、大人も、日によって調子が違います。うまく言葉が出ない日、つい強く言ってしまう日があって当たり前です。そんな自分を責めすぎず、「今日はそういう日だった」と流してあげてください。

一つだけ覚えておいていただきたいのは、子どもは、保護者の方が思っている以上に、そばにいてくれることそのものを感じ取っているということです。完璧な声かけができたかどうかより、「今日も見ていてくれた」「気にかけてくれた」という積み重ねの方が、実はずっと大きな意味を持っています。

もし、家庭での接し方や声かけで悩んだとき、一人で抱え込まずに誰かに話してみるのも一つの方法です。学び舎びえいでは、勉強のことだけでなく、お子さんとの関わり方について保護者の方からご相談をいただくことも多くあります。話すことで、気持ちが整理されたり、新しい視点が見えたりすることもあります。

今日も一日、お疲れさまでした。丘の上から、いつでも応援しています。

まとめ

  • 「早くしなさい」が響かないのは、子どもの「見通しを立てる力」がまだ発達の途中にあるからです。伝え方が悪いわけではありません。
  • 命令の形で言われると、人は誰でも(子どもも大人も)反発したくなる性質があります。これは自然な心の仕組みです。
  • 「選択肢を渡す」「具体的な時間を伝える」「できたことに目を向ける」の3つを意識すると、子どもは自分から動きやすくなります。
  • 毎回うまくできなくても大丈夫です。10回のうち1回でも違う言葉をかけられたら、それで十分です。
  • 完璧な声かけより、「今日も見ていてくれた」という積み重ねの方が、子どもにはずっと大きな意味を持っています。

次にやってみること

今日、朝の支度・宿題・寝る前のどれか1つの場面で、「早くしなさい」の代わりに「選択肢」か「具体的な時間」を伝える言葉を、1回だけ試してみてください。うまくいかなくても、また明日やり直せば大丈夫です。

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